いつでもとなり

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***** 「そうなのよー、それでね、お正月は二人で麒麟神社にお礼がてら初詣に行こうかって言ってるの。こういう時って着物がいいと思う? それとも普段着っぽい方?」  幸福は人を多弁にさせるのか、話し始めたマリアは止まらない。しかし、親友の恋が成就して嬉しいのはハナも同じである。 「そうやねえ、藍野さんならどっちも似合うやろうけど、一年に一度やし着物姿、見てみたいなあ」 「えー、やっぱり?! そしたらすぐ美容院予約しなくちゃ! 写真送ってもいい? ハナちゃんにも見て欲しいな」 「うん、楽しみやぁ」  仕事を辞め、田舎に帰るはずだった沙奈ちゃんはどうしているのか。  いきなり遠距離恋愛の憂き目にあうはずだった二人を救ったのは、亀カフェのオーナーだった。  あの日、お互いの気持ちを確かめ合った二人は、時の経つのも忘れて今後の付き合いについて語っていた。一度距離を縮めるとさすが女子、会話による情報交換の量と速さがとてつもない。  沙奈ちゃんの田舎は想像以上に僻地なこと、マリアが訪ねていけば相当に目立ち、小さな町で噂になるのは間違いないこと。そして沙奈ちゃんが来るには交通費がかかりすぎること。  マリアは思い切って同居を申し出たが、沙奈ちゃんは仕事のあっせんも含め、住居、金銭面全てにおいて援助は受けないと固辞する。その気概は頼もしい限りだが、付き合いたてでめったに会えないというのはあまりに寂しい。 『あのー、お話中アレですけど……』 そんな時だった。五杯目の紅茶のオーダーを運んできた一花オーナーがおずおずと声をかけてきたのだ。
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