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やっぱシーンとしとる……
そうなのだ。ヒロはそのプラベートのほとんどを、芸の追及とお笑いを見る事に費やしているせいで、意外なほど人と交わらないのである。おかげ特に誰からも寿がれることもなく、通知の一つもない。
さっきからハトダンスにむけて気持ちを作ろうとしていたが、寂し過ぎて集中できない。だが、未練がましく携帯を掴んだその時、ぶぶぶ、と手の中が震えた。
「おおっと! もうッ誰や、本番前に困るわー」
言葉とは裏腹にヒロは喜びのあまりタップを連打してメッセージを開けた。瞬間、メッセージのアイコンが虎模様だったのに気づき悪寒が走った。
『こんにちは! 今、巨匠とワイハに居ます!
こっちは、夏夏夏夏とこ夏! 幸せどぇす!
巨匠は、カメハメハ大王のコスプレしてます。
今日のディナーはジューシーな、ぶ厚いお肉をチョイス! そして、タピオカドリンクは、ブルーのトロピカーナ。コンニャクっぽくて、最高です!
ダーリンは、ハトダンスの動画を何回も見ては練習して、自分も動画投稿してハナヒロさんの人気に一役買いたいって言ってます。
何も心配しないでくださいね!
ダーリンが踊るのに忙しいため、代わりに近況報告をさせて頂きました。
紅白、応援しています!
(ホワイトバードより)』
「なんやこれは」
ヒロは携帯をぶち投げそうになった。
急降下するテンションを止めようもない。何も心配しないでくださいね? むしろ心配しかない。自分には巨匠しかいないのか、という哀しみと、今後も積極的に絡んでくるであろう宮本への憂鬱である。
しかし車中で見かけた宮本の彼女、あれほど気品ある淑女(鳥の姿だが)だったのに、予想を裏切るはじけようだ。
さすが、あの宮本先生と付き合える人や……とヒロは深く納得して、携帯をカバンにしまった。
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