いつでもとなり

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   ハナが頷いた。 「うん。前はな、僕、それ考えるだけで怖かった。けど今は怖いだけじゃのうて、ヒロと一緒に、笑ってるお客さん見たいって思い始めてる」 「ほんま? そう思うてくれるか?」 「だって僕のいるとこはヒロの隣りやもん」  ハナはそう言ってにっこり笑った。  もともといったん全く駄目になったものがここまできたのだ。今のハナは着ぐるみさえ着ていれば、そして鳩スイッチさえ入れば、大舞台でもどうにかなる。だから紅白の出番を前にして過呼吸の兆しもない。  これはかなりの進歩だ。  アクシデントだったとはいえ、クリスマスのバスの停留所での出来事が、ハナに自信を与えていた。その時は恐怖だったし、パニックにもなりかけたが一応は出来た。ヒロが感激した通り、一人でちゃんとやれたのだ。  ハナは後日、混乱していた記憶を何度も反芻してみた。そして冷静になって思い出したら気付いたのだ。  お化けのように怖がっていた群衆は、夢中になってハナに声援を送り、笑ってくれていた。その笑顔はピカピカに輝いていた。  瞬間、呪いが解けたような気がした。  それからほどなくして、ハナは不思議なぐらい気持ちが楽になっている事に気が付いた。紅白のリハーサルは着ぐるみなしで踊ったが、複数のスタッフがいても足は震えなかった。  これだったら。もうちょっと試してみたら。  そう思えるようになった自分がまた嬉しかった。  
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