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「おーい、早くー!」
さすがに業を煮やした佐崎がドアを開ける。
二人は廊下に出てオイリー先輩に合流し、出演者専用のエレベーターに乗った。通常ならゆとりあるエレベーターだが、巨漢のラード先輩にファット先輩、そのサポート役のビックなポッチャリ―である。
細身のハナとヒロも着ぐるみで割り増しボディになっており、佐崎も加えた六名でエレベーターは満員御礼だった。いつもは騒がしい面子なのにその中は息が詰まるぐらい静まり返っている。これからいよいよ一年の総決算、紅白歌合戦が始まると思うと、独特の高まりがあった。
台詞はたった一つ『ぐるっぽ―』。そして何度も踊ったハトダンス。
動きは完璧に入っている。間違えようもないのにここにきてハナの心臓ははちきれそうにドキドキしてきた。
ハナはとなりを確かめたくて、目立たないようにそっと手羽の先でヒロに触れた。すぐに気付いたヒロは、堂々とハナの頭をさわさわ撫でた。その一撫でごとに張り詰めた神経が緩む。その手はいつもハナを優しく肯定し続ける。
By ここなつみるくさま
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