2月

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2月

「2月といえばバレンタイン……」 「そうや。ハナ、今年は頑張ってチョコ作る言うてな」 ヒロが優しくその顔を覗き込むので、ハナは頬を赤く染めた。 「やって好きな人にあげるもんやからな、どうせなら手作りがええかなって……ヒ……あっ、や、お、お世話になっとる人みんなに、って事やけど!」 「せやせやせや。俺やのうてスタッフさんやら、マネージャーさんやら、ハトやら、そういうことやな!」  二人の恋はシークレット。男同士でラブしちゃってるなんてことはあるまじきスキャンダルである。  それゆえにハナは慌て、察したヒロも適当なことを言う。しかしこんな稚拙な誤魔化しなど世の腐女子には通用しない。照れ合う二人にアンテナが反応し、即座にネット上でツッコミが交わされる。  『わかってますから』『ハナヒロ界では今さらの常識』『教会にいけ』『婚姻届の準備はいいか』等々の熱いコメントが溢れた。 「でもチョコ作るのって大変なんやねえ。女の子ってすごいわ」  ハナはその二月某日を思い出し、しみじみとため息をついた。  お茶の間ではハナの愛くるしい手作り風景が想像されたはずたが、実際のそれは大きく異なっている。 「チョコの作り方? 任せて!一緒にやりましょう」 相談したマリアは並々ならぬ気合いの入った返事をした。しかし女の子の家に行くのは……と躊躇うとマリアは即答した。 「大丈夫、亀カフェの厨房を貸し切りにしたの。材料も梱包資材も届いてる。労働力は一人でも多い方がいいからヒロ君も一緒に来て。とにかくハトの手羽も借りたいぐらいなのよ」  亀カフェとはマリアの恋人・沙奈ちゃんの職場である。  なんとなく不穏な気配を感じつつ、約束の日に出向いてみるとマリアが仁王立ちで待ち構えていた。
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