2月

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「ハナちゃん幾つ作るの?百?二百?」 「え…い、一個」 「何言ってんの! 事務所に持ち番組のスタッフ、いつもお世話になってる関係者、これから仕事になりそうな有望筋と指折り数えたら五百は下らないでしょ!」 「で、でも僕、ほんまに好きな人にだけでええねん……」 「ハナちゃん、あのね。先の見えない芸能界、売り込みと感謝を伝える機会を逃しちゃだめ! 事務所なんてあてにならないのよ、結局は自分の商品力なの。さあ、頑張りましょう! 渡す時は両腕で胸をガッツリ寄せながら見上げる感じでね! あとで特訓してあげる!」  マリアは『エブリディ♡たわわ』の写真集の発売直後で、自慢の谷間に磨きがかかっていた。一方寄せる胸もないハナであるが、マリアの気迫に負けて否定もできず頷く。  エプロンを着けるとそれが戦闘開始の合図だった。  まるで無間地獄のようにひたすらチョコクッキーを『こねる焼く冷まして箱詰めする』の連続作業。  ヒロは過酷な労働のあまり途中で謎のハイになり、修羅場を目の当たりにした沙奈ちゃんは黙々と梱包に没頭していた。  朝から始まって終わったのは深夜、ハナとヒロは高々と星が出るころに解放されたのである。 「結局100個ももろうてしもたけど……今度はこれを配るんやな……」 「バレンタインってもっと甘いもんやと思うてた……」 「甘かったわ……」 「甘いものだけに……」 オチがついたところで、家にも着いた二人だった。 249412a4-e8ee-4157-a1f8-2ea32e494a0a
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