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6月
このところずっと雨続きだ。
「ごめん、こんな天気だけど撮影のあと自力で帰れる? 事務所の会議に出なきゃならなくて」
申し訳なさそうに佐崎がスタジオを飛び出す。だが、まだ夕方の早い時間に自由になった二人は、解放感でいっぱいだった。
「このままどっかで夕飯食べてこか? ハナも作るの面倒やろ」
「けど外御飯落ち着かへんし、商店街の熊野精肉店でコロッケ買うて帰らん? 揚げたてめっちゃ美味しいんやで」
「うわぁ俺、コロッケ大好きや!」
ヒロはハナの手を引く。しかし車で移動していたので傘がない。そんなヒロにハナは準備良くカバンから折り畳みの傘を差しだした。
「これ、一緒に使おうか」
「おお、さすがハナや!」
ヒロの頭の中はコロッケでいっぱいだが、ハナは乙女スイッチ起動状態である。
わあ……相合傘やぁ……
それはハナの『恋人と過ごしたい理想のシチュエイション200選(すべてを語ると長くなるので割愛)』のうちの一つであった。
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