6月

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 相合傘の良いところは、傘の範囲内に二人が入り込まねばならないので嫌でもくっつきあう事である。    ヒロ、背ぇ高い……となりで見上げるとシュッとして、すんごくカッコええ……  惚れたひいき目を差しひいても傘を持つヒロの横顔は凛々しく美しい。写真界の巨匠・宮本を唸らせるその完璧な造形美、ハナが見惚れるのも仕方ないのだ。  雨の中を話しながら歩く。話題はコロッケにおけるひき肉の比率問題だったり、メンチカツはソースか醤油か問題で色気も素気もないが、ハナは心から幸せだった。話の相槌を打つたびにヒロはデロデロの笑顔になる。 「あ、カタツムリや!」 「珍しいねえ」 アジサイの近くに巨大なかたつむりがはりついている。しげしげと覗き込むハナにヒロが横から申し訳なさそうに言った。 「……ごめんな、俺ずっとハナとオシャレなデートしたいと思ってるんやで。なのにこれじゃ、おかずづくりに苦しむ主婦の帰り道か、小学生の下校時間や」 ハナはふるふると首を横に振り、思い切ってヒロの頬っぺたにちゅっとした。 「僕らはカタツムリみたいにのんびりがええよ」  だって、これからもずっと一緒なんだから。  急いで夢を全部叶えないで、ゆっくり一つづつを味わいたい。  そんな想いをこめてヒロに微笑む。  真っ赤になった二人に我関せずで、雨に濡れたカタツムリがツノを伸ばしてる。    
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