8月

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 宮本には一日中散々振り回された。撮影のためと言いながら、観光スポットや町の美味しい店をくまなく歩き、いつまでたってもシャッターを切る気配がない。  あれ絶対遊びに来て……いやいや、芸術家のやり方ってのは凡人の理解を超えるからな……  大地は凝りに凝った肩と首をコキコキと鳴らした。最後は星が出る夜まで待つことになり、高台の丘でキャンプの設営まで手伝った。さすがに今頃は、真面目に撮影してることだろう。 「大地、良い風呂だったぞ。早く入れ」 「芳野ー、俺もうだめー。起こしてくんなきゃ風呂にいけなーい」  タオルで髪を拭きながら芳野が出てくる。濡れた猫っ毛にほっぺたは肉球のようなピンク色。風呂上がりの芳野はとても可愛い。我が嫁の愛らしさに思わず甘ったれになる大地である。  馬鹿正直な芳野は、真面目に大地を起こしにくる。その腕をつかんで、膝の上に座らせた。困り顔で芳野はたしなめた。 「これじゃますます風呂にいけないだろう」 「俺の体力回復にはまず芳野なんだよ」 言いながら大地は芳野を引き寄せる。  同棲生活も長くなったが、長くなればなるほど好きの度合いが増すというゾッコンぶりである。野良猫気質の芳野も大人しくもたれかかるまでになり、よくぞここまで懐いたものである。 「天文台の職員も交代で見に行ってた。有名人なんだってな」 「おう、ハナヒロ来てたぞ。二人とも顔ちっさかったなー。お笑いのセンスはともかく見た目はさすが芸能人、かっこいいわ可愛いわでキラッキラだった。それに藍野マリアの巨乳の神々しさな! 売店のおっさんが鼻血噴いて床が血染めになってたからな。あれは寿命が伸びるなー」 「むしろ弱るんじゃないのか?」 芳野は眉根を寄せたまま、またもや生真面目に応えた。その頬に自分の手のひらを当て、ふくふく頬っぺの感触を味わう。芸能人の輝きは別格だが、芳野の愛しさは更なる別次元だ。思案顔の芳野の額に唇を寄せる。 「ああいう仕事も大変だよな、宇宙一きれいな星空を撮るって息巻いてたけど」 「それなんだが今夜は観測向きじゃない」 このままどこまでキスを降ろしていこうかと、不埒に密着していた大地は、芳野の一言でガバッと体を離した。
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