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「へっ?! だって満点の星だったぞ?」
「今日は隣町の花火大会だ。星を遮る」
「じゃあ撮影は……」
自分の町の行事ならともかく、隣町の事など完全に失念していた。芳野はスタスタとベランダに行き、窓を開けた。ちなみに二人はこの寂れた町で唯一の高層階のマンションに住んでいる。しかも天体観測が生きがいの芳野は様々な望遠鏡を所持していた。
「高台の丘ならそれなりに距離があるから倍率調整すれば見えるかもしれない……うーん、やはりレンズの特性上逆さになるな」
「いいからちょっと見せて!」
大地は望遠鏡を覗き込んだ。おぼろげではあるが、丘の上で騒いでいる人たちが見える。間違いない。花火に大はしゃぎで空を見上げてる。
「あいつらやっぱり撮影してねえー!」
「やむを得ないだろう。星は最高だが、夏の花火は特別だ」
カッときた大地の横で、芳野がのんびりと言った。空に灯る輝きに目を奪われる芳野の横顔が美しい。見上げる輪郭は学生の頃から変わっていない。
もはや怒るのも馬鹿馬鹿しい気がして大地は芳野の肩を抱いた。
たった一日だけど一緒にいてわかった事がある。
ハナヒロってなんかアレだよな。俺たちみてーに、二人一緒にいられたらそれでもう幸せって感じだったんだよな。
二人の関係はきっと芳野と大地のソレに等しい。だが、仕事柄おおっぴらする事はかなわないはずだ。
芸能人は不自由だ。こんな辺鄙な場所ですら、行く先々で熱狂と歓声に囲まれる。大地はそのすさまじさに驚いたが、彼らは「こんなにのんびりしたのは久しぶりやねえ」と終始ご機嫌だった。
だから宮本は二人をここに連れてきたのかもしれない。人の少ない田舎町で、普通の夏の休日を二人にも教えてやりたくて。
だったら今夜ぐらいは花火も星空も全部楽しんでくれたらいいなと思う。
大地は芳野を引き寄せた。
あの二人も同じ温もりを味わっていますように。
夏の夜空に願いをこめて。
※ちなみに本日8月7日はハナの日💕……ということで
鳴たんもイラスト描いて下さいました! 本家よりキレキレで愛のある二人のトークをお楽しみ下さい。
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=516
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