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コンビを組んでいると必ず受ける質問がある。
それは、相方をどう思っているか、ずっと一緒にやっていくつもりですか、だ。
しかもそこには、質問する側が期待する、確固たる答えが用意されている。
「お互い、いつもとなりにおって、そこら辺は口に出さなくてもわかってるんで」
ハナはごく自然に答える。。
「他に色んな仕事もさせてもろうてますけど、解散とか考えたことないですね。やっぱお笑いが僕らの土台で、帰ってくる場所ですもん」
記者は笑う。ハナも。
決まりきった質問に対する、決まりきった答え。そこには美しい予定調和がある。そのお約束は、全てに適用する。
ハナは勘がよかった。
インタビューに答えるとき、舞台に立つとき、ファンの期待に応えるとき、そこにはいつも、質問する側の口に出されない答えがあった。
実際、本心は関係なかった。相手の求める答えさえ言っていれば、スタッフもプロデューサーも、にこにこ笑ってくれる。
あまりに勘が良く、あまりに上手に演じ過ぎたせいで、ハナはわからなくなってしまった。
どこまでが用意された答えで、何が自分の本心なのか。
本当はどうしたいのか、ずっとこのままなのか。
何だか、いつも心のどこかがくすぶるようにイラつくようになった。それを飲み込んで笑っているうちに、訳もなく突然泣きたくなったりした。
こんなん、僕だけかな。
隣で笑っているヒロを見て思う。ヒロは絶対に音を上げない。どんなにスケジュールがきつくても、休みたいとも、仕事を減らして欲しいとも願わない。
僕がへタレなんかな。
自分がとんでもなく甘ったれてるような気がして、余計に口に出せなくなる。
でも、もし。
せめて少しだけでもそんな気持ちに気付いてくれたら、この真っ暗な気分から立ち上がれるかもしれない。
言えないけど、わかって欲しかった。わかって欲しい人は、決まっていた。
ヒロしか、思いつかなかった。
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