いつものとなり

10月

　パーン……！！

　スタートの合図でずらり並んだ選手たちが一斉に走りだす。バラエティなので、コースは無視で全員参加という雑な徒競走である。
　弾丸のように飛び出した巨大な着ぐるみに弾かれ、周囲の選手たちがドミノ倒しのようにコケた。
　まさにチャンス到来。他の芸人たちはうどんよりいかに受けるかを狙っている。彼らがいかに派手にコケるかに血道を上げている間に、二人はなんとトップに踊り出た。ぐるっぽー！

「おお！」

　宮本はひらりと競技場に降り立った。
　早くもコーナーを回っている。速い。今まで着ぐるみで倍速のダンスを踊ってきた二人にはいつのまにか筋力が備わっていたのだ！
　疾風のごとくゴールを目指す二人。他の芸人は立ち上がるもまたもやコケるというパフォーマンスに全力である。

「そうだ、ヒロ！　俺が求めていたのはこれだ！」

　息切れしはじめたハナを引き離し、ヒロはうどん目指して一心不乱に走った。並走する宮本がカメラのシャッターをビシバシと切りまくる。

　土煙が激走を物語っていた。
　ヒロは見事に一番でゴールのテープを切り、そのまま減速できずうつ伏せで地面に倒れ込んだ。厚みがあるため、まるで飛んでいるように見えるその姿。
　ヒロはハトになった……番組に伝説が生まれた瞬間であった。

　ちなみに後日談、この絶品うどん、佐崎もお裾分けしてもらい、ぽんちゃんに捧げて許してもらったという。
　さらに続く後日談、巨匠も納得のヒロの激走ショットは、顔映りは最高だったものの、着ぐるみの主張が激し過ぎて結局没になったという。