11月

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 真っ赤に染まった紅葉が美しい。 38de969c-5d2c-4518-8091-b415eee7a351  オイリー先輩とポッチャリ―、そしてハナとヒロは紅葉狩りの宴を囲んでいた。テーブル代わりの即席の台の上には大きな弁当箱、大量のおにぎりに団子が詰まっている。雅な景色にも旺盛な食欲、おしゃべりも弾むかと思いきや、全員がどことなく緊張している。  ハナが赤く染まった木々を見上げ、笑顔で言った。 「きれいな紅葉ですねえ、それにこんなに美味しいお弁当まで」 その台詞を受け、ファット先輩とラード先輩が阿吽の呼吸で頷いた。 「景色見ながらの弁当は格別や。たくさん召し上がれ」 「せやせや、遠慮せんとお握りもお団子もたーんとあるで」 「御馳走になりますー」 しかし、その傍らでヒロのお握りを持つ手は震えっぱなしだった。 不自然に間が空き、その視線に気付いたヒロはいきなり握り飯のてっぺんをがぶりと齧った。頬張りすぎて飲み込むことができない。むぐむぐしながら言う。 「こっ、このおにぎり、ほんまうまっうまっ、うままままま」 『カットー!!』 ガチンコが響き渡り、ヒロはがくりと項垂れた。残念な空気が流れる。  もう何度もNGを出したせいで撮影はちっとも進んでいなかった。いったん休憩になり、監督とスタッフが小声で打合せを始める。 「ヒロ、リラックスやでー」 「わてらちょっとお茶してくるわ」 オイリーの二人も、ポッチャリ―とともに楽屋に引っ込んでしまった。(もちろんわずかな休憩時間も美味なるオヤツを楽しむためである)  そう、ここは撮影現場。  大好評の探偵物『ねこたん』の二時間ドラマが放映されるのである。
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