12月

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「お葉書も来とるで。二人はどんなクリスマスを過ごすんですかって」 「普通やよな」「普通やねえ」  思わず声が揃ってくふくふ笑い合う。  実はもう家にはクリスマスツリーが飾ってある。今年は仲良く二人で飾り付けをし、てっぺんには去年と同じくハナ作のぶさい……いや、いびつ……ではなく豆大福激似のハトのマスコットが光っていた。  ヒロがハナの頭をポン、と撫でる。 「またハナと一緒にクリスマスできるだけで、えらい幸せ」 「ヒロ……ほんま?」  このセリフをテレビの前の腐女子なファンが聞き逃すわけもない。 (聞きましたよ……『また』って仰いましたね……)(あの二人は毎年クリスマスを一緒に……)(もう隠しもしない……)(この言葉がもはやクリスマスプレゼント)などと生ぬるく盛り上がっている。  スタッフからA4判の冊子を渡され、ポーっとしていたハナはようやく我に返った。 「あっ! そ、そうやった! さいごに視聴者の皆さまにクリスマスプレゼントがあったんや。宮本先生、渾身の撮りおろし『ヒロ・素顔のままで___第三弾・銀河とともに』どどーんと10名さまにプレゼント! ご応募お待ちしてますー!」 「コレいる人おるん? 笑えるわけでもないし、生活に役立つ情報がのってるわけでもない。俺の写真がのってるだけやで」 「それが写真集いうもんやろ」  最も価値のわかって欲しい人にまったく届いていない。宮本もさぞかし無念であろう。  しかし、銀河をバックに草原に立つヒロの美しさは、宇宙一の美貌と発売早々から大評判である。性格に多々問題はあれど仕事だけはきっちり結果を出してくる、それが宮本の巨匠たるゆえんであった。  残り時間が一分を切った。
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