12月

3/3

410人が本棚に入れています
本棚に追加
/609ページ
「あ、もう時間ない、どうしよ12月の思い出、語ってないわ」 「うーん、12月言うたら今現在やしな……バタバタしたまま年越しまでいきそうや」 「でも僕、思うんやけど、特別に何かせんでも、楽しい日、大変な日、自分なりにがんばって一年無事に過ごせたら、それでもうじゅうぶんやない?」 「ハナの言う通りや。めっちゃわかるわ。俺も思い出すことやったら普段の些細な事ばっかや。うどん食べ過ぎて腹痛なった時のこととか、ハナと着ぐるみ交換して佐崎さん驚かせて遊んだ事とか、商店街でコロッケおまけにもろうて嬉しかったとか……」  輝くイケメンの日常はあまりに小市民的であった。しかもハナのせっかくのまとめに微妙に水を差している。しかしハナは御尤もと言わんばかりに優しく頷いた。ヒロのトンチキぶりも愛でる、これもまた愛である。  二人は画面に向かって手を振った。 「それでは今年も長らくお付き合い下さり、ありがとうございました!」 「「ハトチャンネルでしたー」」  エンディングが流れた。  一年の労を労ってスタジオから拍手が起きる。  ハナはヒロに、ヒロはハナに小さく拍手を送りあう。  拍手はテレビの向こう側、二人を応援している自分自身にも。  誰もが明日も明後日も、ささやかに時間を積みかさねている。  一年間、今年もよく頑張りました。  Merry Xmas & Happy new year!   < 完 >
/609ページ

最初のコメントを投稿しよう!

410人が本棚に入れています
本棚に追加