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4.
さて。
やや体調が上向むきになったハナが、様子を見ながら仕事を再開させてしばし。
経過は順調といって良かった。
先輩芸人との交流も復活し、ハナはずいぶん本来の明るさを取り戻している。
まだお笑い番組や直接観客の前に立つ仕事には臨めないものの、ちょっとしたCMやドラマなど、映像重視の仕事は無難にこなせるようになってきた、そんなある日。
事務所では重々しく会議が開かれていた。
といっても、この場にいるのはマネージャーの佐崎とヒロとハナで、もはや幹部たちは立ち去った後である。
広々とした会議室のはじっこにかたまり、残された三人はそれぞれに低く唸っている。
「んー……」
「うん……」
「んんん……」
三人をうならせているのはハナヒロの今後についてであった。
ハナが休養して数か月、番組改変に伴い、ずっと二人でやってきた深夜番組が打ち切りになったのである。15分程度の短いバラエティーだったが二年近く続いていおり、何より二人の名前が入った冠番組だった。これにより二人一緒のレギュラー番組はゼロになる。
「いよいよきてもうたな……」
ヒロは腕組みしながら呟いた。これを皮切りに佐崎が声を上げる。
「ごめん、私がもっとうまく局と話をつなげられれば!」
「違うよ、佐崎さんのせいやあらへん。僕や」
ハナはうつむいたまま言った。
会議の最中からずっと、ハナは顔を上げられないでいた。状況が状況であるから、誰もハナを直接責めはしない。それでもずっと大事にしてきた番組が終わりになったのは、言われるまでもなく相方一人では番組が成立しなかったからだ。
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