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第2章
ポスっとベッドに押し倒された真上には、高嶺さんの顔がある。優しく微笑んでいて愛おしそうに頬を撫でてくれる。
「このままさ、本当は抱きたいんだけど隼人の気持ちはついてきてる?」
この数時間で起こった事を確かめているんだってわかってる。
高嶺さんがシングルファーザーだと知ったことでちゃんと恋人になれたのが数時間前。愛人になろうと決意していた僕は恋人に昇格した。
動揺と戸惑い。愛人から恋人になってこうして身体を重ね確かめ合うことに気持ちがついてきてるかってを聞かれてるんだ。
勢いに任せて流されてしまいそうな僕と、追いついていない僕の気持ちを優先してくれる高嶺さんはやっぱり大人だと思った。
心も身体も同じじゃないと意味がない。やっと実った僕の恋を大切にしたい。
だけど……高嶺さんのものになりたいってドクドクと熱を帯びて身体は求めてる。
「今……本当に嬉しくて高嶺さんが欲しいって思ってます。これって流されてるんでしょうか」
メーターを振り切った思考回路は嬉しさを噛みしめることしか出来ないでいる。
「隼人は幸せ?」
「幸せです」
「俺もこうやっている事が信じられない。本当に幸せだよ」
実感として湧いてくるのはもっともっと後なんだろうか。
それでも即物的に手を伸ばしたくなる。高嶺さんを向かえるように真っ直ぐ伸ばした手は、逞しい首元に絡みつき、彼は応えてくれるようにその身体の重みを預け応えてくれる。
「抱いて高嶺さん……僕のものになって」
叶わないと諦めた想いを、意を決して口にする。
「もう隼人のものだけどね」
欲しかった言葉が返ってきて込み上げる涙は後から後からこめかみへと溢れていった。
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