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トボトボと家路に向かう途中でコンビニに寄って軽く食べるものを買う。
午後十一時。いつもならちゃんとご飯を作って食べるんだけど、そんな気にはなれなかった。胸につっかえるもの。それが見え隠れして気持ちが重くなる。
ドアに鍵を差し込んで惣菜をテーブルに置くと、冷蔵庫に向かいチューハイを取り出して惣菜の前に座った。
目の前には部屋干しした洗濯物がぶら下がっている。綺麗に皺を伸ばしたお気に入りのシャツとお気に入りの下着。洗濯も掃除も好きだし、子供も大好き。それでも一番好きなのは高嶺さん。
高嶺さんが愛して止まない奥様を見て落ち込む自分を知りたいなんて、くそっカスの大笑いだ。
高嶺さんが愛している奥様と美紅ちゃん。毎日見せてくれる愛おしい笑顔は僕のものじゃない。
そんなの僕が勝手に想いを募らせて妄想して憧れてるもの。
それは手に入らないと現実を突きつけられるだけでしかなかった。高嶺さんを好き好き思う気持ちは俺だけのもので誰にも邪魔されなくて大好きな妄想と同じ。
つまりはリアルな現実は同性を好きになるなんて誰も思わないことで、まさかなんてこともない。
綺麗な奥様と可愛い子供。
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