第2章

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ベッドから抜け出してキッチン向かおうとする僕の腰に腕が回り、勢いよく引き戻された。 「うわぁ!高嶺さん?」 「もう少しこのまま抱きしめていたいんだけど、ダメかな?」 覗き込む顔にキューンと胸が鳴った。ダメなことなんてありません。どんどん抱きしめちゃってください。 ただずっとこのままで抱き合ってるとか拷問に近いんですけど。 また欲しくなるよ?だってこんな逞しい腕や、割れてる腹筋や、その優しく甘い顔を見てると欲情してしまう。 僕の性欲ってなかなか薄いはずだ。その場の雰囲気で流されるセックスが多かった。 まあね、相手が好きだった訳じゃない。ただの処理に近いものがあったし。っていうか、そんなに経験はないんだけど。 僕は身体より心がないとダメなタイプだってわかってる。現に高嶺さんを好きになってからほかの誰かに触られることは嫌悪感さえ感じてたし。 引かれた身体はするりと胸の隙間に滑り込んで元いた場所に収まった。 「ダメなんかじゃないです。高嶺さんといられる時はずっとくっついていたい」 喉元にすり寄って思いっきり高嶺さんの香りを嗅いだ。逞しい腕がぐるりと僕を抱きしめてくれる。その温かさも僕のものなんだって嬉しくてこみ上げてくる。涙を堪えるためにぎゅっと目を閉じた。 「ずっとこうしていたいんだけど、実は……午後には帰らないといけないんだ」 髪にキスを落としながら申し訳なさそうに言った。鉛が心底に沈んだ感じに、こみ上げる涙は悲しいものに変わり鼻の奥を突き刺す。 あ……美紅ちゃん。 「その…美紅が帰ってくる。それで」 「じゃあそれまで一緒にいて下さい」 言葉を遮るように言葉を重ねた。わかってる。美紅ちゃんは高嶺さんの宝物だから。 僕を優先してほしいけどそれは高嶺さんを困らせるだけだってわかってるから。 「違うよ、隼人。午後からうちに来ないか?」 「え?」 高嶺さんの足が僕の足と絡まって、隙間なく合わさる身体と額にかかる吐息で熱が上がったような気がした。 「三人で食事をしよう。これからはうちにも来て欲しいから僕の子供を紹介させて欲しい」 それは先生じゃなく恋人としてってこと?美紅ちゃんに紹介してくれるってこと?
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