第2章

6/112
2631人が本棚に入れています
本棚に追加
/478ページ
なんだ、これ?そびえ立つ建物に呆気に取られた。 疎い僕でもわかる。高級マンションだよ、ここ。 ゲートを監視する警備員。そこを潜って駐車場に入ると大きな箱が並んでいてその一つの前で車を停めた。 リモコンで操作する高嶺さんはタイトにこなし、シャッターを開けた。 その中に車を乗り入れると車が二台止まっている。 「美紅、もう帰ってるみたいだ」 そう言うと赤いワーゲンのそばに車を停めた。どうなってるの?キョロキョロしてるうちに高嶺さんは助手席のドアを開けた。 「隼人」 呼ばれて見上げれば触れるだけのキスをしてくれる。 優しく笑って離れていった高嶺さんを追ってドアを閉めた。 差し出された手を握りしめて歩いていく。迷路のような通路を通ってエレベーターに乗る。引き寄せ抱きしめてくれて優しく髪を撫でてくれた。それだけでなんだか安心する。 ぼんやりと階を告げる数字を目で追った。 電子音と共に扉が開く。離れていった高嶺さんはまだ手を繋いでくれてる。いつまでこの手は繋いでい…ていんだろう。一歩を踏み出せない僕を伺うように高嶺さんは見る。 「どうした?」 「高嶺さん…手……」 「ああ、いいよ、誰にも会わないから」     
/478ページ

最初のコメントを投稿しよう!