第1章

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そんじょそこらの女よりなんでも出来てもそんな僕なんて意味がない。こうやって独りでコンビニ惣菜を突いて、毎日職場と家を往復して、そこそこ歳を取って死んでくことになっても高嶺さんには関係ないことなんだ。 妄想は妄想でしかない。リアルな現実はこんなにも寂しい。 女を好きになれない僕は、男と恋愛するしかない。先のない出会いに何度も泣いて別れてきた。そんな想いはもう疲れたと妄想の世界にどっぷり浸かることに決めたのに。 所詮はリアルな人を好きになって妄想したって現実は現実なんだよね。 僕は独りで高嶺さんには家族がいて。保育士と父兄の関係が終わるのは数年後だって期間限定だって分かってることなのに。 この二年で好きになり過ぎたんだ。ほんの一部の時間を共有することに喜んで、高嶺さんのことなんて何も知らない。 ずっと先の未来で、あんな保父さんもいたなぁって思い出してもらえるだけラッキーなんだってこと。思い出してもらえるような思い出さえないから記憶の隅の隅っこで隠れてるだけの存在になるかもしれないってこと。 プラスチックの容器を袋から出してプルトップを開ける。 さほど美味しくもない惣菜をチューハイで流し込んだ。 恋がしたい。僕を僕だけを好きになってほしい。愛してるよって毎日言いたいし、愛してるよって毎日言って欲しい。     
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