第1章

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第1章

僕の理想が歩いてくる。格好よく仕事をして格好よく飯を食べる。格好よくタバコをふかして、格好よく子育てしてる。そんな貴方に恋をした社会人二年目江森隼人、僕は貴方の虜です。好きになってもいいですか? ってかこんなことを言ってる時点で僕は貴方に恋をしています。 奥さんもいてお子さんもいる既婚者に恋をしてしまった。どうあがいたって望みのない恋。それでも好きになってしまったら仕方がない。口に出して言えなくてもやっぱり貴方が好きなんだから仕方がない。 「お疲れ様です。美紅ちゃんお待ちかねですよ」 ここは私立ゆりかご園。働くお母さんの味方。延長保育も午前0時までの保育園。そこに毎晩遅くまで働いて美紅ちゃんを迎えに来る高嶺さんを待っている。いや、美紅ちゃんが待ってるんだけど。 「いつも遅くまですみません」 学生時代ラグビーをしていたんだという高嶺さんは高身長、高学歴、おまけに爽やかイケメンときたら好きにならない奴はいない。いや、女性はいない。まあね、男でも見惚れる格好良さだってこと。 颯爽と門を開け駆けてくる彼を保育室から見るのが日課な僕は、あえて遅番を希望してこの時間を楽しみにしてる。 見るだけなら誰も文句は言いますまい。てな感じでうっとりしながら堪能してる。 「さっき寝ちゃったんで連れてきますね」 お迎えは基本玄関で待ってもらうことになっている。他の園児が親を恋しがってしまわないように配慮してあるんだ。
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