第2章

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それから僕達は時間の許す限りベッドの中で色んな話をした。 高嶺さんの腕枕で見つめ合って、髪を優しく撫でてくれるのがうっとりするほど気持ちよくて…… そしてその手は足から尻にかけて行き来してそれも気持ち良い。 決して何かを呼び起こすようなものではないんだけど妙に恥ずかしかったり。 お互い好きになったきっかけを話せば「体験保育」というワードが出てきた。 「最初に電話した時、隼人が出たんだよ」 その声に興味を持って申し込んでくれて僕と出会った。一目惚れしたんだって言ってくれた。僕達は初めて会った時から惹かれ合っていたことになる。そんな運命みたいな出会いがあるなんて、諦めていた恋愛を手にすることが出来たなんて奇跡なんだって思った。 高嶺さんがゆりかご園に気に留めてくれなかったら? 電話に出たのが僕じゃなく遅番だったら高嶺さんには会っていない。 うちの園を選んでくれなかったらって思うとこれは運命、出会う運命だったんだって思いたい。 だってこんな確率で出会うなんてそうそうないと思うんだよ。片思いが二年あったとしてもこうやって想いを伝えられたのは運命なんだよ、きっと。 そんなことを思いながらずっと高嶺さんを見つめていた。見惚れるほど綺麗な顔に優しい声。冷えないように何度も布団を掛けてくれる。きっと気遣いも凄くできる人なんだって思う。 愛おしいそうに髪を梳くその手は温かく優しくて甘い。何度も額や頬にキスをしながら隼人って呼んでくれたんだ。 風呂に交代で入り、その間にコーヒーを煎れた。何故だかキッチンに二人立ってコーヒーを飲み、高嶺さんはベランダに移動して煙草を吸う。 紫煙を吐き出すその背中をキッチンに立ってコーヒーを飲みながらじっと見つめ、しがみつきたい気持ちをぐっと我慢しながら飲み干した。 僕の部屋に高嶺さんがいるんだって今更だけど嬉しくて泣きそうになった。 夢にまで見た高嶺さんと抱き合えて、乱れたベッドを横目に昨日の情事を思い出す。独りでシてたベッドで高嶺さんと抱き合った。 もう独りで泣かなくてもいい。想っても叶わないなんて思わなくてもいいんだよね。 一人悲しい妄想は楽しく夢のような現実になるんだよね、これからは。
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