襖の向こう

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襖の向こう

 父方の伯父が亡くなり、独り暮らしだった伯父の遺品整理に、父と二人で伯父の家へ行った。  話には聞いていたが、伯父の家は独り暮らしには過ぎる程の大豪邸だった。  田舎で土地が安いとはいえ、純和風の平屋は驚きの広さで、ここの遺品整理をすると考えただけで気持ちが沈む程だ。  それでも来た以上はと、どこの部屋に何があるのかを調べるべく、父と手分けをして各部屋を見て回ることにしたのだが、ふと、奇妙なことに気がついた。  伯父の家の部屋は、部屋と部屋を壁ではなく襖で仕切る造りになっているのだが、襖に描かれた絵に関する品が必ず室内に置かれているのだ。  例えば、襖に描かれているのが花瓶なら、そこの部屋の中には花瓶を始め、陶磁器の類が所狭しと置かれている。  本なら書物、人形なら和洋取り混ぜたリアルな人形と、さらにはぬいぐるみまでが置かれているといった具合だ。  伯父とは会った記憶もろくにないが、父の話では結構な趣味人で、何かと物を集めるのが大好きな人だったという。  それが高じて、襖を目次代わりに収集した品を分類していたのだろう。  身内ながら相当な道楽者だと思いつつ、一部屋一部屋見回っていたのだが、俺の足はとある図柄の描かれた襖の前で凍りついた。
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