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ふと、前方から人影がこちらに向かって来た。
スーツを着た男のようだが、上半身はよく見えない。
男は、向かいの踏切の少し後ろで立ち止まった。
やっと、線路の先から電車の明かりが近づいて来ると、向かい側にいた男はゆっくりと歩き出した。
そして、電車が通り過ぎる瞬間。
男はまだ踏切が閉まってるいるにも関わらず、すり抜けるように線路内に入って来た。
その時、電車の明かりで見えたのは、首から上がない男の姿だった。
俺はすぐにでも逃げ出したかったが、こちらを向いて立っている首のない男が怖くて動けなかった。
すると突然、電車の急ブレーキ音と共に男の悲痛な叫び声が聞こえ、俺は咄嗟に耳と塞ぎ、目を閉じた。
声が消えてゆっくりと目を開けると、電車は何事もなく通り過ぎた後だった。
首のない男は消えていたが、踏切内には重い空気が流れていた。
バーが上がると、俺は逃げるように走って踏切を渡った。
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