夜の踏切

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振り返っても踏切が見えない所まで来ると、俺はようやく安堵した。 そして、もうすぐ家が見えるところに来た時、俺の耳元で声が聞こえた。 「……くれ……たすけて……くれ。……痛い……」 声は弱々しく、苦しそうな呼吸が聞こえる。 俺はその声の主を探し、それを見つけて後悔した。 その声の主は、電柱の脇にいた。 バスケットボールほどの大きさの見慣れた形。 街灯の光で黒く見えたのは、血液だろう。 血みどろで顎をガクガクさせているのは、間違えなく男の頭部だった。 白目を剥き、口をパクパクとさせて助けを求めていた。 俺はその時、あの踏切にいた男の首ではないかと思ったが、ここから踏切までは離れていて戸惑った。 後ずさりした俺に気づいたのか、男の目玉はぎゅるっと俺の方を見た。 そして、「俺の体はどこだあああ!!」と大声で叫んだ。 声は踏切で聞いた叫び声とよく似ていて、俺は全力で逃げた。 恐怖で体が震え、脳裏には男の顔、耳には男の叫び声がへばりつき、一睡も出来なかった。
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