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俺の浮気がばれて、妻が激怒している。
土下座しても、妻は口もきいてくれない。
でもちゃんと俺のために今日もお弁当をつくってくれている。
なんだかんだ言って、やはり俺に惚れているのだろう。
昼休み、俺は職場の机でお弁当箱を開く。
いただきまーす、もう浮気なんてしませーん。
心の中でつぶやきながら、お弁当箱を開けてみる。
なんだこれ!?
ぎょっとして、思わず弁当箱のふたを閉じそうになる。
もう一度弁当箱の中身をそっと確認してみる。
爪だ。
切られた爪がびっちりとお弁当箱に敷き詰められている。
まるでチリメンジャコみたいに、爪がみっちりと詰まっている。
誰の爪だ。おそらく妻の爪だろう。爪切りをした後に、袋か何かにずっとためていたのだろうか。
何日分の爪だ? 一か月? いや、一年分?
いつから俺の浮気に気付いていたんだ?
そもそも一体なんのために?
俺をおびえさせるためか?
はじめて妻に得体の知れない恐怖を感じる。
今度浮気をすれば殺されるかもしれない。
俺は二度と浮気などしないと心で誓う。
俺は指先で弁当箱の爪を摘み上げてみる。
指に爪が刺さって、俺ははじめて妻の心の痛みを感じた。
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