第1章

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 俺は、某アルバイト情報誌で良さそうのを探していた。  なるべく、近いとこがいい。地方の大学に行ってるから、地方なんて都市圏からしたら笑えるくらいの量しかないが、「うーうー」と唸りながら探すと、一つ面白そうな案件があった。 「ん?」  十時間労働。しかし、ただ指定された場所で椅子に座るだけ、だとか。  俺はあまり知らないが、プラカードのような仕事だろうか。その求人広告を見ると時給が二千円――って、二千円!? 「……びっくら、ぽんだぜぇ」  すかさず、俺は電話かける。このとき、怪しい仕事じゃないか。いくら有名誌でも、やばい仕事なんじゃと疑わなかった。いや、欲に目がくらんだのだろう。くらみすぎだ。電話は野太い声の男が出た。「はい、はいはい、はいはいはい、はいはい」と、はいばかり言う男で、まるで俺が電話受付のようだが、ともかく面接も決まり、とんとん拍子に話は進んだ。 「え?」  面接も指定された雑居ビルの一室に入り、そこで用意された書類を読め、だけだった。  世にも奇妙なドラマのような話だがほんとである。俺は流石に困惑したが、しかし、書類の中には封筒でここまでの交通費も入ってたし、とりあえずやってみよう、と仕事を開始した。  そこら辺の道端、というのがふさわしい、住宅街にあるごく普通の道に、俺はパイプ椅子で、ずっと座り続けた。ときおり、メールで指示があり、折り紙を作れ、歌えなど、意味不明な指示があったが、しかし終わり頃には当日払いで給料が振り込まれ、結局それを一年以上は続けた。  怪しさ満点の仕事だが、一応は給料は振り込まれるし、仕事内容もすごく簡単で、良いこと尽くめ――あ、でも。一度だけ、変なことがあったな。  生首が転がってきたんだ。  その生首は、ひげの生えたシワだらけのご老体で、そのじーさんは目をカッと開かせ、俺に叫んだ。「貴様が後継者か!」そして、コロコロと転がってった。  俺は目の錯覚だと思い、かぶりを振って転がってった生首を見る。生首はとっくに影も形もない。 「………」  そこは、一年くらいで辞めた。というか、突如メールが来て、仕事がなくなりました。これまで、ありがとうございました、と告げられたのだ。
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