君のつむじを見下ろしながら

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君のつむじを見下ろしながら

まさか、本当に来るとは思わなかった。 いや、言ったからにはきちんとやり抜くことも知っていたし、約束はきちんと守る。 ゼミではだいたい5分前には席についていたし、貸したマンガはきっちり一週間後、きれいな淡いグリーンの紙袋に入って、渡したときよりも、端正な見た目で手元に帰ってきた。 そもそも、付き合い始めたきっかけだって、憲法概論のノートの貸し借り。こちらは借りた方で、きれいな文字でまとめられたノートのおかげで、成績はAプラス。 そこからのお礼にお茶かごはんでも、なんて流れだったのだ。 だけど、可夜子が桜を見に仙台に行こうかな、とメールを寄越してきたときに、「おぅ、いつでも来いよ」なんて返したときには、正直、本気ではなかった。 社交辞令。 そんなよそよそしいものでなくても、そのうちに流されていってしまう、いつかの約束。 まさかすぐに新幹線のチケットを取り、ホテルも予約して、なんて行動を起こすとは思わなかったのだ。 しかも、かなり久しぶり。前回は、確か、山村の結婚式の二次会だった気がする。 そのときは、何となくみんなで、わやわやしていただけで、ふたりっきりで会うのは、正直、いつ以来だ?     
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