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12月の寒い夜でした。いくつかのスポットを車で回ったT達は最後に山奥の病院跡へ
行ったそうです。そこは山道の脇にヒッソリと佇んでいて、道路にあるオレンジの街燈が
彩る、彼等的に“おあつらえ向きの場所”だったそうです。入口はロープが張っていて、
監視カメラ設置の看板がありましたが、大抵はダミーという事も、経験でわかっていました。
彼等は落書きだらけの施設内を、銃と頭に付けたライトで照らしながら、二手に分かれて進んだそうです。3階建ての階層をそれぞれ廻りましたが、期待したような事はなく、屋上前で合流して(屋上は入口が廃材と瓦礫で埋まり、行けなかったそうです。)後は下に戻るだけでした…
「音がする…」
2階まで下りた時、一番後ろの一人が呟きました。全員が歩くのをやめ、銃を構え、彼と一緒に後ろを振り返ります。ライトで照らしますが、何もいないし、何も聞こえません。また歩き始めます。
「また音がする…」
再びの声に止まります。やっぱり何も聞こえません。歩き始めます。
「音がするよ!」
切羽詰まった声に全員のライトが彼に集中しました。音が止まる筈です。反射して光る迷彩服に、
大きな黒が、模様でなく、真っ黒でヒラヒラした人の腕が肩からぶら下がっていたのです。その手には
錆びたメスが握られていて、歩く度にカチャカチャと彼の銃に当たっています。全員が息を?んだ瞬間、Tが発砲しました。白いBB弾が彼に勢いよく当たり…
「ギャァ、痛ぇよ!」
悲鳴と同時にTが皆を動かし、車まで走ったのは言うまでもありません。黒い腕は消えていました…
こんな体験をしたTですが、今だに心霊スポットに行っています(メンバーは減りました。)
理由を聞くと彼は笑い、こう答えます。
「銃は効いたぜ?」
(終)
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