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「何でこんなオッサンが良いとか、言うかなぁ」
ぼんやりとしているのは、ビールを飲んでいるからだけではない。
立川雅哉はソファに座って、観てもいないテレビを付けたまま、ただぼんやりと呟いた。
「まーた言ってる。付き合い始めて一年、一緒に暮らす様になって五週になるのに、まだそんなこと言ってんですか?」
後ろからかかった声は、若い男の物だった。
雅哉は四十過ぎた。が、彼、大下五紀は、まだ二十代だ。
「ん?風呂出たのか。なら俺も入って来るか」
五紀の言葉には特に返答せず、雅哉はソファを立った。
雅哉が年齢を気にする度、五紀が返す言葉はいつも同じだからだ。
俺は気にしてなんかいない、と。
「あーあー。まーたこんなに飲んで」
ローテーブルには空き缶が何本か。五紀は片付けながら、嘆息した。
あの人の給料、使われてない分のが多かったけど。使い道は酒だったんじゃないのか。と思ってしまう。
「まぁ、酒に強いのは知ってるし、次の日仕事の時は飲まないのも知ってるけど。……まぁ、こんな風に酒飲んで無いと、ヤらしてくんないから、良いけど」
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