1/7
307人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ

「何でこんなオッサンが良いとか、言うかなぁ」  ぼんやりとしているのは、ビールを飲んでいるからだけではない。  立川(たつかわ)雅哉(まさや)はソファに座って、観てもいないテレビを付けたまま、ただぼんやりと呟いた。 「まーた言ってる。付き合い始めて一年、一緒に暮らす様になって五週になるのに、まだそんなこと言ってんですか?」  後ろからかかった声は、若い男の物だった。  雅哉は四十過ぎた。が、彼、大下(おおした)五紀(いつき)は、まだ二十代だ。 「ん?風呂出たのか。なら俺も入って来るか」  五紀の言葉には特に返答せず、雅哉はソファを立った。  雅哉が年齢を気にする度、五紀が返す言葉はいつも同じだからだ。  俺は気にしてなんかいない、と。 「あーあー。まーたこんなに飲んで」  ローテーブルには空き缶が何本か。五紀は片付けながら、嘆息した。  あの人の給料、使われてない分のが多かったけど。使い道は酒だったんじゃないのか。と思ってしまう。 「まぁ、酒に強いのは知ってるし、次の日仕事の時は飲まないのも知ってるけど。……まぁ、こんな風に酒飲んで無いと、ヤらしてくんないから、良いけど」     
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!