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あわ
呼吸が浅くなる。
何者かに見つめられている感覚がして、だのに
まるで瞼は境目が貼り付けられたように開いてはくれない。
ゆっくりとその影が動く気配がする。
ひたりと首筋に何かが当てられた。
細く、筋張った指先。
二本の親指が自分の喉仏に触れ、爪が喰い込む痛みに一気に跳ね起きた。
「えっ、えっ? なに!?」
掛けていた毛布を蹴り飛ばしてぐるりと背後に視線をやると、暗闇の中で啓介が手を輪っかの状態にしたまま目を丸くして固まっていた。
「やっ、ええと、よく寝ていたので。生きているかの確認を」
「え、……なんでお前はそんなトンチキなの?」
枕元のスマホで時間を確認すると、夜中の二時だった。バックライトが目に染みて何度か強く瞬いていると、啓介がポツリと「まぶしいなあ」と文句を垂れたから俺は平常心を保つのに寝起きの労力を全部使った。
「お前、今帰ってきたの?」
「あ、うん。そうそう。帰って来たのは三十分くらい前だけど。なんやかんや三次会まで行ってしまってね。いやー、頭弱い奴らはへらへら笑ってればその場のノリでなんとかなるから楽でいーわ」
「マジでその性格クソだから俺の愛想が尽きる前に直した方が良いよ」
「ははー」
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