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7 生きていれる時間
「S美、体の調子どう?。」
N野は優しく、S美に声をかける。S美は元気だよ、と微笑みながらN野の質問に答える。N野は、そうかと言い優しく微笑む。すると、S美がさきほどまで微笑んでいた顔が、真剣な顔つきにガラリと変え口をひらく。
「N野君。私、N野君に話さなきゃいけない事があるんだけど、聞いてくれる?。」
N野はうんうんとうなずき、真剣な眼差しを見せるN野。
「実はね、今更言うのも変かもしれないけど、医者のk宮先生から、私の体の病気について結果が出たのね。それで、あの。」
S美は目から大粒の涙がこぼれ落ちてくる。
「あ、ごめん、つい涙が、ごめん話続けるね。私、後3ヶ月しか生きられないの。」
その言葉に、N野は返事を返せなかった。体全体が金縛りにあったかのように、全く動かせなかった。頭の中が真っ白だった。
そして、S美は、あの約束事をN野に伝えた。
「結婚式、あげられないね。こんな体にウエディングドレス姿なんて合わない。もう気持ち悪いよ。」
S美はずっと泣きながら言葉を重く、重く話す。N野は違った。
「S美。結婚式、あげよう。僕はどんな姿であろうとS美はS美なんだから。気持ち悪くなんかないよ。素敵だよ。」
S美はうんうんとうなずきながらも、泣いている。病室から見える1つの満月。
いつも輝きを放ちながら、漆黒の闇の上に浮かんでいるのに、今日はなんだかいつもより輝きがない、そんな風に感じた。
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