窓の外

4/5
前へ
/5ページ
次へ
「検診、ちゃんと行った?」  翌朝、拓哉は母親を問い詰めた。 「何よ、急に」  朝食の準備をしながら、振り向かずに返事をする。 「行った?」 「行ったわよ」 「再検査とかちゃんと受けてよね」 「どうしたのよ。まぁ、確かに疑いありで再検査1つあるけど」 「なんだ、お前。何引っかかったの?」  それまで食卓で新聞を広げていた父親が聞いた。 「うーん…乳ガン? 今忙しくて再検査、どうしようかなって」 「ばか。お前、検査優先だろ」 「わかったわよ」  拓哉と父親の剣幕に気圧され、頷いた。  果たして母親は再検査で初期の乳ガンが発見された。幸いにも手術も成功し、経過も良好だ。  拓哉は満足した。もし、窓の外の声が未来を予言しているのであれば、これで裏をかいた事になる。どういう展開になるのだろうか。  しかし、それ以降、窓の外で話す男たちは現れず、受験勉強に明け暮れる毎日。大学進学で家を離れ、いつしか忘れてしまった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加