つめたい星の色は、青

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 慎重に歩いているつもりなのに、ばきんと凍った雪を踏み割る音がする。凍った道なんて慣れてるはずなのに、今にも転びそうだ。 「いつもいつも、俺が勝手に台無しにしてんだよな。上手くいってたものを全部自分で壊して……そういう病気なのかもな」  気を抜くと水本より速く歩いてしまいそうだから、離れないように手を握るのだけど。繋いだ細い指はあまりに弱々しく手の中から抜けてしまいそうで、日野は握り返す指が震える。 「……春が来たら離れるのはわかってたことだけど、これで終わりじゃないさ。僕はもう離れても水本と一緒に生きてくって決めたんさ」  なにそれ、と水本は呆れたように笑う。 「前の僕だったら卒業したらそれきりだったかもしれないけど、水本のことは違うんよ」  水本を大事に思っていると、不安が消え去るまで何度でも言おうと、日野は決意する。水本に全てを信じてもらえたら、何も怖いことなどなくなる気がするから。 「なんでこんなに寒いのに日野の手は温かいんだろうな」  水本はそうつぶやいて、見て、と繋いでた手と反対側の手を日野の顔の前へ伸ばす。 「すごい紫。右と左で爪の色が違う」  淡いピンクと青紫の爪を並べて見せて笑う。短く切られた小さな爪。 「なんかの本で読んだんだけど、パン職人って手の温度が高い方が良いらしいよ。日野はきっと良い職人になるね」     
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