つめたい星の色は、青

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 暗闇に目が慣れて、水本の顔だけ見える。腕や胸にかかる身体の重みや、服の下に感じる皮膚のなめらかさに、これは現実なんだと言われている。 「日野に出逢ってからはそういうこと考える時間がだんだん減って……日野が見ていてくれれば、たぶんもう衝動的に死ぬことはないんじゃないかと思った。でも喧嘩した時にさ、これでもう本当に何にもなくなったから簡単に死ねるなって考えたんだけど。その時初めて死にたくないなって。日野と一緒にしたこと色々思い出して、今まで死ななくて良かったって。あの時、日野のこと信じて良かった。いつでも死ねると思ってたから、どんなことされても平気だと思ってたけど……今は、日野がいるから、何があっても大丈夫だって思うよ」  あまりに穏やかな表情で水本は日野を見る。本当はもうここに彼はいないような気がして、全てが自身の欲望が作り上げた幻のように思える。確かめるように日野は更に強く抱きしめると、痛いよと水本は小さく笑いながら振りほどいた。  言いたいことは皆、喉につかえて上手く吐き出せず、日野は自分で自分がもどかしい。     
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