つめたい星の色は、青

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 教室にいる時の水本は相変わらずで人を寄せ付けず、日野は話しかけることが出来なかった。優秀さを自らアピールする優等生たちの方が、まだ近寄る隙を見せてくれている。彼らだって孤立はしたくないのだ。もし勇気を出して水本に話しかけたとしても、後で周囲から何話してたんだよと絡まれることがわかっている。隣の席なのに、あの生物室での距離よりずっと遠い。  文化祭までの半月近く、放課後は各クラスの模擬店の準備期間となっており、部活をやっていない生徒は強制参加ということになっている。日野のクラスは、綿あめやヨーヨー釣りなどの縁日をやることになっていた。何かしらのイベントはいつも決まった人達ばかりが熱心に取り組んでいて、そこに混ざっていい人といけない人がいると、日野は思う。美術も技術も家庭科も苦手で、積極性も持ち合わせていないのでやることがない。だからと言ってこっそりと逃げ帰るのも後ろめたい。日野は寄る辺なく教室の隅で、邪魔にならないよう息を潜めている。そういう人間は他にも数人いて、隅っこに集まってだらだらと喋ったりスマートフォンを弄りながら、体良く帰るタイミングをうかがっている。     
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