つめたい星の色は、青

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 宮坂もそういうことが別に得意でないと本人は言うのだけれど、一年生の時は推薦で学級委員長を任され、明るく誰とでもそつなく付き合えるタイプなので、イベントの時は自ら動いて役割を確保している。今回も積極的に大道具作りに参加しており、一緒にやろうと声をかけてくれたのだけれど、日野は役に立てる自信がなくて曖昧な返事で濁しながら、なんとなく手を添える程度の手伝いしか出来ていない。他に仲の良いあっちゃんも、思い出作りがしたいと立候補した実行委員の仕事へ行ってしまった。修学旅行の旅程も同じ班の人達が決めて、日野はただ頷いて後についていくだけだった。彼らを羨ましく思いながらも、いつも参加しているふりをするだけ。  自己嫌悪でいたたまれなくなり、日野はこっそり教室を抜け出して生物室に向かった。  今日も水本はプラネタリウムを作っていた。この間と同じ、星になるであろう穴をひとつひとつ開ける作業を続けている。水本が手元のパーツを窓から差す陽にかざすと、黒い机の天板に紙の穴から透けた小さな光の点が散らばる。  きれいだね、と話しかけると水本は呆れたような顔をして日野を一瞬だけ見て。またすぐに作業に戻る。 「こんなとこ来てないで、クラス展示の手伝いしろよ。楽しい思い出作りに参加した方がいいんじゃないの」 「もうちょっと、ここにいる。いてもあんま手伝うことないさね。ああいうのは得意な人たちに任せた方がいいだろうし……」 「行った方がいいって。手伝わないで俺と一緒にここにいたこと知られると、あとで絶対なんか言われるよ。俺は厄介者だしさ」 「……僕がいてもいなくても同じだがね。どうせ足手まといになるだろうし」  その言葉を聞いて、水本は作業の手を止めて向かいに座る日野の顔を真っ直ぐに見る。日野は思わず下を向いて目を逸らした。変なことを言ってしまった、と今更後悔した。 「僕は、あんま面白い人間じゃないから……」     
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