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「別に面白い人間である必要はないじゃん。誰かにそう言われた?」
「……去年付き合ってた彼女とか。同じクラスの女子から告白されて付き合ってみたんだけど、日野ってあんまり面白くないねって言われて、半年くらいで終わった。付き合ったらもっと楽しいのかと思ってたって。自分でもそう思うし」
こんな話、言うつもりなかったのだけど。宮坂とあっちゃんにしか話していないことが、するっとこぼれた。
「それは別に、おまえが悪いってわけじゃないと思うけどな」
少し顔を上げると、水本はまだ日野を真っ直ぐ見ていた。視線が、刺さりそうだ。
「あれじゃねえの、日野っていかにも人畜無害そうだから、理不尽に怒ったり自分の意見を否定されることがなさそうだし、彼氏がいるっていう自尊心も満たされるから、付き合ってって言われたんじゃねえの。別れた後も後腐れなさそうだし。この人と付き合いたいっていうより、誰かと付き合いたかったわけだろ」
「そうだね……そうかもしれない」
「怒っていいんだよ、俺が今言ったことに対して」
「うーん……でも、なんか言ってもらったら、すっきりした。ありがとう」
「なんだそれ」
水本は呆れたように言って、また作業を続ける。
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