つめたい星の色は、青

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「えーと、家の手伝いしてる。うち、パン屋だから。外でバイトさせてくれないし。あとテレビ見たりゲームしたり」 「ふうん。パン屋継ぐの?」 「うん、長男だし」 「そっか、真面目だな。土日は大体家で寝てる。あと図書館。あんまり出歩くと親が良い顔しないから家にいる」 「うちもそう。遊び行って遅く帰ると、家の手伝いもしないでって」 「ふうん」  二人でいるから何か喋った方が良いかと日野は思うのだけど。相変わらず思うように会話を続けられない。普段友達といる時のように笑ってごまかすというのは、水本には通用しないだろう。何故だかいつもよりもどかしく、喋ろうとすると舌がうまく回らない。 「……あのさ、修学旅行なんで休んだの?」 「行くだけ無駄だから」 「……それは斬新な考え方だね」 「俺がいない方がみんな楽しいだろ。どこの斑に入れるかとか、俺に気を使わなくて済んで。他人の楽しい思い出作りに水さすような野暮なことするかよ。猿の群れだって少しでも異質な個体がいたら徹底的に排除するんだよ。人間の遺伝子に刷り込まれてる習慣なんだから仕方ない」  日野は何も言い返せなかった。そんなことないと取り繕う言葉は簡単に口に出来たはずなのに、あの作り物のように綺麗な目で見られてしまったら、不誠実なことは出来ないような気がして言えなかった。     
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