つめたい星の色は、青

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 朝は麻衣子からのメールで起こされた。帰る前の日に水本にも焼き肉を奢ってくれるというメール。  同じベッドの上でタオルを握って膝を抱えるようにうずくまって眠る水本を、日野は起こさないように撫でる。もう授業中に居眠りしてる水本の顔をこっそり横目で見ていただけの存在ではない。飼えない猫を無責任に拾ったりしない。誰かの後ろで何かをしてもらうのを待って、感情を口にするのをためらっていた頃とは違う人間になれたと、日野は感じている。全部水本が変えてくれた。未来も一番好きな人も誰かに用意してもらったのではなく、自分で選んで決めた。だからこんなにも真剣になれる。泣きはらして赤く染まった水本のまぶたにそっと唇で触れる。  水本を揺さぶって起こすと寝ぼけているのか、目を閉じたままふらふらと手を伸ばして日野のシャツを掴む。 「好きだから出来ないって言ってくれて、嬉しかった」  寝起きの掠れた声で水本はささやく。     
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