つめたい星の色は、青

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「……見た目とかセックスさせるとか以外のことじゃ一生誰にも受け入れてもらえないって覚悟は出来てた。だから誰に何されても仕方ないって諦めるのが、一番正しい方法だと思ってたから、そういうことしないで許されるわけがないって。それで誰からも好かれるわけないって……」  額のカーブをなぞるようにゆっくりと手のひらで撫でる。何度も何度も、水本が目を開けるまで。いつでも冷たい星の中に一人で棲んでいるような彼の孤独を、こんなことで溶かすことが出来るとは思えないけれど。それでも少しは役に立ちたい。そうでないと日野自身もやりきれない。  チェックアウトをして街へ出ると空はすっかり晴れていて、太陽の光が掻き寄せられた雪に反射して眩しい。日陰に残った氷の溝をゆっくりと踏みしめながら駅へ向かう。東京の道路には融雪用のスプリンクラーも側溝もない。日野が知っている世界にあるものはなく、ないものばかりがここにはある。  いつだって群れることを嫌い何でも一人でこなす水本が、何故あんなに誰かに見放されることを怖がるのか。水本は自分がいなくなっても平気だと、この街にすぐ溶け込んで自分のことなんか忘れてしまうと、日野は思っていた。だから日野に嫌われたくない見放されたくないと必死な水本を見て安心した。彼が自分を必要とすればするほど、彼が思うほどには優しくないずるい人間であることを自覚して、日野は苛立つ。もっと優しい人になりたい。彼の全てを受け止められるような人になりたいのに。     
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