つめたい星の色は、青

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 二人でいる時だけ幼い子供みたいに無邪気に笑う水本のこと。永遠に失いたくない。  帰る前の晩は約束通り麻衣子に焼き肉を奢ってもらった。麻衣子は水本を見てやたら興奮して、写真まで撮っていた。やはりどこの誰が見ても、東京でだって水本は別格だ。 「水本くんは年上のお姉さんはどうかな?」 「そういうのやめてあげて」 「日野のお姉さんと俺が結婚したらさ、俺たち兄弟になれるよ」 「そういう提案もやめて」  日野の隣で冗談を言って穏やかに笑う水本は、彼がなりたがっていた「普通の高校生」そのものに思えた。この姿からは誰も彼の苦しみを想像出来ないだろう。 「なんでひーちゃんはこんなに残念に育っちゃったんだろう。小さい頃は可愛かったのに」  麻衣子はそう言いながら、二人の写真を何枚も撮ってくれた。どの写真も何の悩みなんかなさそうに二人並んで呑気に笑ってて、こんな顔してるわけないのにと日野は思ってしまった。  帰りの東京駅で水本が新幹線の切符を二枚分買おうとしたのを、日野は制した。 「買い方覚えたいから自分で買う。水本に逢いたくなった時に一人で新幹線に乗れないと困るから」  ビニール傘は姉の家に置いてきた。また東京に来た時に使う為に。次に来る時はテレビで見たのと同じ街ではなく、水本の住む街だ。
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