つめたい星の色は、青

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 「君」と「僕」という二人がそれぞれ離れてしまうのではなくて、「僕たち」という一つの関係が二つに分けられていく。一つのパンを二人で分けあったり、一つのイヤホンを二人で聴いたり。二人で一つの「僕たち」は残酷にも簡単に切り分けられる。  結局水本は受けた大学全てに合格して、先生たちを随分喜ばせた。卒業式の日にはアルバムに何か書いてだの写真撮ってだの、ここぞとばかり女の子たちが水本の元に群がり、いつも通りのうんざりした表情で暴言を吐いて蹴散らしていた。 「おまえらさ、今まで結構酷い態度とってたんに、こういう時だけ調子いいのな」  その様子を見かねた宮坂が女の子たちにそう言うと、宮坂だって似たようなもんだがね、と言い返される。 「……こいつはいいんだよ。幼なじみだから」  水本の言葉に、みんな驚いて黙ってしまった。一番驚いていたのは宮坂本人で、にやにや笑いながら水本の肩に手を回し、調子に乗るなと振り払われ疎ましがられていた。  日野は偶然廊下ですれ違った園田と少しだけ話した。地元の短大に行くという園田は、お店継いだら買いに行ってあげるよ、と笑いながら卒業証書の入った筒で日野を小突く。     
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