つめたい星の色は、青

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 水本も宮坂もあっちゃんも、みんな新しい生活への準備に追われている。互いの最後の時間は退屈な授業と比較にならない速さで過ぎ去ってしまう。 「やっぱりドライブ連れてって」  水本からそんなメールが届いた。行き先はどこでもいいという。彼の好きなパンを持って、またあの海に向かう。最初は日野が車を運転してるなんて不思議だなんて笑っていたが、しばらくすると水本はずっと目を閉じて浅い呼吸を繰り返していて、かなりつらそうだ。見るからに顔色も悪い。車が苦手だとは何度も聞いていたけれど、ここまでとは思わなかった。 「どっか停めて少し休もうか? 引き返す?」 「……いい、大丈夫。精神的なものだから。行って」  それ以上何も言わないし、何も聞かない。でも大体想像はつく。結局途中のサービスエリアで吐いてしまって、そこで引き返した。それでも水本は、また連れてってと言う。 「日野の車に乗れなかったら、今頑張らないと一生車に乗れないかもしれないから」     
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