つめたい星の色は、青

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 それから毎日、忙しくない時間帯や店が終わった後に、日野は水本を車に乗せた。少しずつ距離を伸ばして、隣の市まで行っても平気になれた。ショッピングモールのシネコンで初めて二人で映画を観たり。もう制服を着なくなるので、これから着る服を見立ててもらったり。入学式に着るスーツを買ったり。残された日々はさらさらと砂のように音もなく崩れて消えてく。水本が引っ越すまでに、また海へ行けるだろうか。  信号を待つ少しの間、助手席に座る水本の顔を日野は横目で見る。この狭い空間に二人きりですぐ隣に座っていて、その気配をこんなに近くに感じているのに。真っ直ぐ前ばかり見ていて、水本の顔をまっすぐに見れない。もどかしい感情のやり場が見つからず、日野はハンドルを強く握った。
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