つめたい星の色は、青

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 早口で喋ろうとして所々つっかえる、強くはっきりした口調。平気なふりをしているのが伝わってくる。  国道沿いにはパチンコ屋とラブホテルと飲食店と、潰れて廃墟になった店ばかりで、水本が喜びそうな場所はどこにもない。どこへ向かったらいいのかわからない。それでもこうして狭い車の中に二人きりでいると、世界の果てに二人だけが取り残されたようだ。訳もなく寂しくて、ほんの少しだけわくわくする。 「……何があったって、誰に何されたって、それで水本そのものの価値が下がるわけじゃないさ」 「なんだそれ」 「前にそんな感じのこと自分で言ってたがね」 「そうだっけ。よく覚えてんね」  水本が言った言葉なら、日野はほとんど全部覚えている。特別だから、忘れたくなくて必死でその欠片を集めてる。今この瞬間も日野は、水本のつぶやく言葉や些細な動作の全てを採取して、失くさないようにピンで留めておきたいと感じている。 「でもこれで全部終わったわけじゃないし。あいつが死んだからって、なかったことにはならないんだよ」 「なかったことにならなくても、僕にとっての水本の価値は何も変わらないよ」     
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