つめたい星の色は、青

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 次の日、いつもの時間いつもの待ち合わせ場所で水本を車に乗せる。昨日は寝てて電話に出られなくて悪かった、と水本は謝るのだけど。もう何度も見ているその気怠そうな表情で、窓の外をぼんやりと眺める定まらない視線で、電話に出られなかった理由に日野は気付いている。昨日の夜、誰に何をされていたのか気付いてしまっている。問い詰めたら学費も家賃も払ってもらうから仕方ないと言うのだろうか。無闇に触れて拒否されるのが怖くて、触れたいのに触れられない。  日野が宮坂から電話があったことを話すと、じゃあもう近所中に広まってるなと苦笑いした。 「まあ、いいよ。どうでも……俺はどうせもうすぐここを離れるから誰に何言われてもいいけど。妹がなんか言われるのは嫌だな」  水本の話し声はいつも静かに揺れる水のようで、二人で過ごした放課後の生物室みたいに、エンジン音が校庭の喧噪のように遠く聞こえる。いつも何でも人に決めてもらう日野とこの土地に思い入れのない水本には、もう行き場所は思いつかなくて、ただひたすらにバイパスを山に向かって走る。 「あいつらが罪悪感で一生苦しめばいいって思うのは、酷い考えだよな」     
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