つめたい星の色は、青

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「そんなことないさね。全然、そんなこと……」 「……どうせそんな罪悪感持ってんのなんて宮坂くらいで、あとの連中は衝撃的なネタ話くらいにしか思ってないんだろうけど」  フロントガラスに少しだけ映る水本の影。道路沿いの建物がだんだん少なくなり、山と田んぼばかりの風景に変わっていく。車を運転するようになったらもう立派な大人だと日野は思っていたのだが、他の人たちみたいに楽しい場所も知らないし、優しい言葉も持っていない。想像していた大人の姿に心がまだまだ追いつけなくて、もどかしい。水本の孤独の全てを理解するのは難しく、がむしゃらに突き進めるほど無敵でもなく、己の不完全さばかりを思い知らされる。 「あのさ、東京行ったら宮ちゃんのことたまには構ってやって。知ってる人が誰もいないとこに行くの、さすがにプレッシャーみたいだから。あれで結構寂しがり屋だし」  わかった、と水本は軽く頷いて、いつまで経ってもあの馬鹿と縁が切れないと笑って。俺だって不安だよ、と小さく漏らした。 「生まれ育った東京へ帰れるのに、早く帰りたいってずっと思ってたのに……。俺一人だと馬鹿みたいにどんどん悪い方に行っちゃうけど。いつも日野が引き止めて明るい方へ連れ戻してくれたから」     
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