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僕だって本当は不安だと言いたい気持ちを、日野は押し込める。変わってしまうことや終わってしまうことに、まだ慣れてない。それでもその時が来たら、信号が青になったら前に進まなきゃならない。
陽の光が眩しい、と助手席のサンバイザーを下ろして水本は目を伏せる。
「去年の冬から児童相談所とか学校とか警察なんかに、児童が被害に遭ってるって匿名の通報が何度もあったって記事を読んだんだけどさ。……俺の父親がやったと思う?」
「……誰だっていいがね。水本に酷いことした奴に相応の罰がくだったっていう事実だけで充分だいね」
そうだね、と今にも消えてしまいそうな声で言って、口角をあげて笑う。水本がそうやって笑う時は、無理して平気なふりをしてる時だと、日野はもう知っている。
「……この辺ラブホテルばっかだね。値下げしましたって書いてあるよ。ラブホテルって十八歳なら入れるんだっけ?」
「入らないよ。そういうことしないって約束したがね」
「いいのに、しても。車の中でも構わないし。今度こそ大丈夫だからさ。俺が東京に行く前に一回くらいしとかないと損だろ?」
「そういうこと言いなさんな。そんなことしなくても水本の事ちゃんと好きだって前に言ったがね」
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